伊賀斎奉閣
一般葬
ひとのために尽くすひと
故人様は、かつて学校の校長先生として多くの子どもたちを導き、育んできた方でした。教育に対する情熱は並々ならぬもので、地域の子どもたちに、小さな頃に遊んでいた手づくりの玩具の作り方を優しく教えておられたそうです。
陶芸や絵画にも親しまれ、伊賀市の展覧会「伊賀市民美術展覧会」では、彫塑工芸部門において表彰されるほどの腕前でした。
故人様は「人のためになることは何でもする」といったお心の持ち主で、何よりもご家族を大切にされていました。ご家族にとっては、いつでも自分のことより家族を優先し、支えつづけてくれた存在であり、「何から何まで故人に頼りきりでした。家族としては感謝しかありません」と、深い想いを伝えてくださいました。
お葬式で、「お世話になった方々に、故人の作品をひとつでもお持ち帰りいただけたら…」というご親族のご希望から、会場には特設の作品コーナーが設けられました。通夜の後には、長い列ができるほど多くの参列者が「先生には本当にお世話になった」と口々に言いながら、ひとつひとつ丁寧に作品を手に取り、持ち帰られる姿がありました。
通夜が終わると作品がほとんどなくなっていましたが、ご家族様が新たに作品を追加してくださり、葬儀に集まった人々の手にも、故人様のぬくもりが渡されました。
骨壺のご準備についてご家族様とお話していたとき、「もしよろしければ、既製品よりも、故人様の作品の中からご遺骨を納める器を選んでみてはいかがでしょうか」とご提案させていただきました。作品棚の中から、ちょうど良い大きさの器を見つけていただき、それに納めると、まるで最初からそのために作られていたかのようにぴたりと収まりました。ご家族様は「きっと、本人も喜びます」と、優しく微笑まれていました。
通夜・葬儀のあいだ、何人もの参列者の方々が「故人には本当にお世話になった」とご遺族様に声をかけておられ、その様子から、故人様がいかに多くの方々の人生に寄り添い、心を尽くされてきたのかを改めて感じました。
故人様は、深く人を愛し、人からも惜しまれ、愛され続けてきた――
そんな優しさに満ちた生涯を、あらためて思い起こす温かなご葬儀となりました。
2025年4月17日 O家様(担当:阿部)