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名張斎奉閣

思い出は永遠(とわ)に

公開:2025.07.01

故人様は、ものづくりを心から楽しむ方でした。中でも、料理はとりわけ大切な存在だったようです。
料理本やインターネットのレシピを丁寧にスクラップし、ノートにまとめて残されており、そのノートは何冊にもわたっていました。中には、ご家族に特に好評だったメニューを集めた一冊もあったそうです。

ご家族様にとって、故人様の手料理は日常そのものであり、何よりも心に残る味でした。
「本当においしかったんです」と語られるご家族のまなざしには、愛情あふれる食卓の風景が静かに浮かび上がっていました。

あまりにも突然のお別れに、深い寂しさが広がる中、私は「自分にできることは何か」を思いながら、ご家族のお話に耳を傾けていました。その中で印象的だったのが、「よく作ってくれていたハンバーグ」と「大好きだったコーヒー」のお話でした。

「レシピノートの中で、特によく作ってくれていた料理はありますか?」とお尋ねすると、「んー…ハンバーグをよく作ってくれてたなあ」と、懐かしそうに話してくださいました。そこで私は、通夜の後にレシピノートをもとにハンバーグを手作りし、ドリップしたコーヒーとともに、ご葬儀の際にお供えさせていただきました。

 

また、ご家族から「手紙を入れたい」というお申し出がありましたので、折り紙にメッセージを綴ってお棺に納める方法をご提案しました。皆様、驚きながらも、提案を喜んでいただき、当日のお別れの際にはご家族の皆様がそれぞれの想いを込めて書かれた折り紙をお棺に納めてくださいました。

「こんなにしてもらえるなんて…」という一言に、静かな感動があふれていました。

お別れ前に伺ったこんなやりとりも、私の心に残っています。

「お棺に一緒に入れて差し上げたいものはありますか?」とお尋ねしたところ、「コーヒーが好きだったので、スティックコーヒーとレシピノートを入れたいです」。とお話しくださいました。するとご家族の方がふと笑いながら、「私もコーヒー好きやから、自分のときも同じようにコーヒー入れてほしいなぁ」とおっしゃいました。

それは、故人様の思い出が家族の心にしっかりと残り、これからもつながっていくことを感じさせる、あたたかな一言でした。

ご家族の記憶に深く刻まれた“おいしい時間”が、レシピノートと温かな料理となって、このお別れのひとときにそっと花を添えてくれた―そんな、優しさと愛情に満ちたご葬儀でした。

この大切な時間に立ち会わせていただけたこと、心より感謝申し上げます。

2025年6月18日 I家様(担当:重本)