久居斎奉閣
家族を想い、静かに愛を紡いだ人生 スイカとおまんじゅうに包まれた温かなご葬儀
M様は、生涯を通じてご家族を大切にされていた、穏やかで優しいお人柄の方だったそうです。口数は多くなくとも、にこやかに微笑みながら話されるその姿に、周囲の人々は安心感を覚えたといいます。日々、天照様や氏神様、仏壇に手を合わせ、感謝と祈りを欠かさなかった誠実な生き方は、ご家族の皆様にも深い尊敬の念を抱かせていました。
そんなM様を偲ぶご葬儀では、ご家族の想いが随所に込められ、あたたかな空気に包まれていました。通夜の前には、M様だけのオリジナルメモリアルCD「ラシメロ」をご家族とともにお聴きいただき、「いい感じですね」とのお言葉を頂戴しました。通夜後にはCDを流しながら対面の儀が行われ、お孫様が静かに涙を流されていた姿が、深く心に残りました。
通夜の際、祭壇前にはご家族と写った写真が飾られており、お忙しい中でもM様への想いを形にしようとされたご遺族の優しさが感じられました。事前に、M様がスイカとおまんじゅうをお好きだったと伺っておりましたが、通夜ではそれらのお供えはありませんでした。そこで翌朝のご葬儀に向けて、私の方でスイカとおまんじゅうを準備し、器に移して温かいお茶とともに開式15分前にサプライズでご提供しようと考えておりました。
ところがその朝、お孫様から「おじいちゃんが好きだったものを準備しました」とのお申し出があり、お預かりしたのは、まさかのスイカでした。驚きはありましたが、表情には出さず、丁寧に祭壇にお供えさせていただきました。さらに、奥様から「好きだったおまんじゅうは棺に入れてもいい?」とお声がけいただき、大量のおまんじゅうを用意されていたことが判明。こちらも事前に祭壇前にお供えさせていただきました。“サプライズかぶり”となりましたが、私は開式15分前予定通り「私からのプレゼントです」とお茶とともにご提供し、「一点お詫びを…全部重なってしまいました」とお伝えしました。
するとご家族からは、「そんなことない。心遣い、気配りがうれしいですし、さすがです。感心しました」と、あたたかいお言葉をいただきました。私の用意した品々も、ご家族の想いと一緒にお供えされ、式後には花々とともに棺の中へ。奥様が「スイカもおまんじゅうもいっぱいあるからいっぱい食べれるよ」とお声をかけられる姿が、とても印象的でした。
喪主様は単身赴任が多く、なかなか傍にいられなかったことを悔やまれていましたが、祭壇に飾られた写真や、お母さまへの優しい声かけからは、M様への変わらぬ愛情とご家族の深い絆がひしひしと伝わってまいりました。
このご葬儀を通じて、M様がどれほど多くの愛に包まれて生きてこられたのかを感じることができました。ご家族の皆様のあたたかな想いに触れさせていただいたこと、そして大切な時間をご一緒させていただけたことに、心より感謝申し上げます。
2025年9月18日 O家様(担当:深田)