大好きなビールとあたたかなご家族に囲まれて

「家族との時間」。その言葉が、これほど深く心に残ったご葬儀はありません。

皆でお酒を飲みながら、明るく語り合う。そんな時間を何より大切にされていた故人様。決してお酒が強いわけではなかったけれど、特にビールを好まれ、なかでもお気に入りのビールの銘柄があったと、ご家族様は笑顔で教えてくださいました。

故人様の優しさは、ご家族様にとってかけがえのないものであり、「とにかく優しい方だった」と語られた一言には、長い時間を共に歩まれたからこそ感じる深い愛情が込められていました。

初めて式場でご挨拶を交わしたときから、ご家族様のあたたかな想いに触れ、私自身もできる限りの形で寄り添いたいと思いました。そこで、故人様が愛されたビールとおつまみを用意し、式場内にそっと飾らせていただくことをご提案いたしました。

その場が少しでも、故人様が好まれた「家族との時間」の空気に近づくようにと願っての演出でしたが、ご家族様からは「本当にありがとうございます」「何度もお礼を言いたくなるくらいです」とお言葉をいただき、恐縮すると同時に、心からこのご提案をして良かったと感じました。

中でも忘れられないのは、「故人様が好きなおつまみは何だったのですか？」と私が伺った際に、ご家族がふと語られた一言「家族との時間です」。その言葉は、おつまみの種類ではなく、大切にしていた“人とのつながり”を指していたのだと、その瞬間に強く感じました。

ご葬儀前、なんとお忙しい中にもかかわらず、私宛にお手紙まで頂戴しました。お心のこもったお言葉に、胸が熱くなり、あの穏やかで優しい故人様の人柄が、ご親戚の皆様にも受け継がれているのだと、改めて実感いたしました。

明るい中にも、しっかりとした決意と想いを込めて旅立ちを見送るご家族の姿に、私は深い感動を覚えました。このご葬儀は、私にとっても、人生の尊さと、寄り添うことの意味をあらためて教えてくれる、かけがえのない経験となりました。

ご家族の皆様、本当にありがとうございました。故人様の優しさとご家族の絆が、これからも温かくつながり続けますように、心よりお祈り申し上げます。

2025年10月11日　担当：近藤