白子斎奉閣
竹細工とともに歩んだ人生 手仕事がつないだ人との絆

長年、市の職員として地域に尽力された故人様は、退職後、ふれあいセンターで出会った竹細工を通じて、第二の人生を静かに、しかし情熱的に歩まれました。もともとモノづくりが好きだったという故人様は、70歳の頃から竹細工にのめり込み、ご自宅を作品制作のために改装されるほどの熱意をお持ちでした。材料となる竹は、知り合いの山から自ら切り出し、一本一本に心を込めて作品を仕上げていかれました。その腕前は、師匠から「商品になる」と言われるほどだったそうです。

ご葬儀のお打ち合わせの際、ご家族の口からふと出た「これ、竹に似とるな」という一言が心に残り、「先ほどから竹、竹とおっしゃっていますが、何か竹にこだわりというか思いがおありなんですか」とお尋ねいたしました。すると、故人様が竹細工が趣味で数々の作品を作られていたことが分かり、「その作品を展示されてはどうですか」とご提案しました。

この提案に、ご家族様は「ぜひ皆様にも見ていただきたい」と快くお応えくださり、式場内にテーブルを設け、多くの竹細工作品を展示することとなりました。作品は多岐にわたり、持参できなかった作品の写真もお見せいただきました。

展示された竹細工を囲んで、遠方のご親戚様は「普段はなかなか会えないけれど、作品のおかげで近くに感じられた」と話されていました。
また、喪主様が「この作品は誰かに使っていただいたほうがいいから、よかったら持って行って」と参列者の方々に声をかけられたことも印象に残っています。その言葉には、故人様の想いを引き継いでいこうとする温かな気持ちが込められていました。

さらに奥様は、「お互いの作品ができたら見せ合いっこをしていた」と、故人様との大切な時間を懐かしそうに語られました。ご夫婦の穏やかな時間と、作品を通じた絆の深さを感じさせるひとときでした。
ご葬儀を通して、私は改めて「手仕事は、人と人とを結ぶ橋になるのだ」と実感いたしました。故人様が遺された竹細工は、単なる作品ではなく、ご家族や地域との絆そのものでした。ご家族様、ご親戚様と心あたたまるお話を交わす中で、私自身もそのつながりの一部に加えていただいたような気がいたします。
故人様のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、このたびのご葬儀に携わらせていただけたことに深く感謝申し上げます。
2025年10月12日 N家様(担当:村田)