笹川斎奉閣
家族の笑顔、金木犀のように包まれて
金木犀の香りを好み、秋を愛した故人様。ご家族やご友人との時間を何よりも大切にされ、静かに寄り添いながら周囲を見守っておられるような、優しさに満ちた方だったそうです。
そんな故人様は、ご家族にとって「静かに家族を見守る優しい方」でした。体が弱かったにもかかわらず、丈夫な体に生んでくれて、育ててくれた―ご家族様は「感謝しかありません」と、その深い想いを口にされていました。
お葬式に際しては、葬儀の経験が少なく不安なご様子のご家族様。しかし、「お花が好きだった故人様を、花いっぱいで送りたい」という真っ直ぐなお気持ちを感じました。私は、ご安置から葬儀当日まで一貫して担当させていただいたこともあり、どんな些細なことでも気軽に頼っていただけるよう、常に寄り添う気持ちでサポートさせていただきました。
打ち合わせの中で、「トマトに塩をかけて食べるのが好きだった」というエピソードを耳にした私は、急遽、式場に“塩”をご用意することをご提案したところ、「ありがとう」とおっしゃって、すぐにお棺の中へ手向けてくださいました。
通夜・告別式の当日、式場にはたくさんの花々が飾られ、まるで秋風に揺れる金木犀のように、優しく温かな空気に包まれていました。参列されたご親族様のおひとりが、「トマトに塩をかけて食べるのが好きだったなぁ」とぽつりとつぶやかれたその言葉に、会場はしみじみとした思い出に包まれたようでした。
ご葬儀を終えたあと、ご家族の皆様から「ありがとう」と感謝のお言葉をいただきました。その瞬間、私はこのお見送りに関わることができたことを心から嬉しく思い、深いやりがいを感じました。
ご家族様のあたたかな想いと、故人様のやさしい人柄に触れられたひとときに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
2025年10月14日 H家様(担当:田所)