鈴鹿中央斎奉閣
好きだったものをもう一度 〜故人様への想いを込めて〜
ご家族様とのお打ち合わせの際、「お棺にお入れしたいものはございますか」とお伺いしたところ、故人様のお好きなものがたくさん挙がりました。その中でも特段お好きなものが「メロン」と「スイカ」でした。病院での長い療養生活の中、はじめのうちはご家族様が差し入れをされて、故人様も召し上がっていたそうです。しかし、病状が悪化するにつれて次第に口にできなくなってしまったと伺いました。
お通夜の日、皆様からお供えいただいた果物籠の中に立派なメロンがありました。

故人様の好きなものを伺った際に「メロンとスイカ」というお話が心に残っており、ご家族様に故人様へのお供えとしていただいたメロンを故人様へ、そしてお棺へとお納めすることをご提案いたしました。すると、「いいんですか?していただいても!きっと喜んでくれると思います」と、ぱっと花が咲くような笑顔でお返事をいただきました。
一方で、スイカもお好きとお伺いしておりましたが、季節柄、果実そのものを手に入れるのは難しい時期でした。「どうにかしてお贈りできないか」と考え、スーパーを巡り探したところ、ようやく見つけたのがスイカの果汁を使ったスイカジュレでした。

葬儀当日、「喜んでいただけるだろうか」と不安に思いながらご用意したものをお渡しすると、ご家族様より「好きなものでいっぱいになりました」と嬉しそうにお言葉をいただきました。
お別れの時間、ご家族様は、私どもがお切りしたメロンとご用意させていただいたスイカジュレを、故人様のお顔のそばへすぐに口にできるようにとひとつひとつ丁寧に入れられていました。療養生活の中で叶わなかった「好きなものを味わう」という願いを、そっと叶えるような温かなひと時でした。

穏やかな人生を全うされた故人様。
柔らかな光が差し込む式場では、多くの方々に温かく見送られ、また大好きなものに囲まれて旅立たれました。

最後のご挨拶の際、ご家族様より「本当によくしてくれた、ありがとう」「こんな素敵なお式になるとは思わなかった」と笑顔でお言葉をいただき、そのお顔が心に残っております。
改めて、ご葬儀をお手伝いできたことへの感謝と、お一人おひとりに寄り添うご葬儀の大切さを感じたお式でした。お手伝いさせていただき、誠にありがとうございました。
2025年10月29日 K家様(担当:小室)