久居斎奉閣
故人様らしさを編み込んだ、あたたかなお別れのかたち
暦の上では春を迎えながらも、まだ冬の余韻が残る二月。久居斎奉閣のご家族でゆっくりとお過ごしいただける和室にて、I家様のお別れの時間をお手伝いさせていただきました。形式にとらわれず、故人様らしさを大切にしたい―ご家族のそんな想いから、ご家族だけで静かに向き合う、あたたかなお別れの場がかたちになっていきました。

故人様は、生前、縫物や編み物を何よりも楽しまれていた方でした。多くの作品を手がけてこられましたが、現在ご自宅に残っているものは多くはなく、それでもご家族にとっては、黙々と手を動かしながら糸を編み、布を縫う故人様の姿が、今も鮮明に心に残っているご様子でした。ご家族からは「いわゆるお葬式らしい儀式よりも、母らしいかたちで見送りたい」というお気持ちをお聞かせいただきました。

また、故人様のお写真をお持ちになる予定があり、それを大切に飾れるスペースを作りたいとのご要望もありました。そこで私からは、和室の落ち着いた空間を活かし、故人様の前にお写真や思い出の品を並べた「思い出スペース」を設けてはどうかとご提案しました。すでに棺の中には編み物用の棒をお納めされていましたが、「編み物にまつわる品々も一緒に並べることで、より故人様らしさが伝わるのではないか」とお話ししました。
一つひとつの品には、故人様が過ごしてきた時間や、ご家族との何気ない日常が静かに宿っています。それらを並べることで、言葉にしなくても、故人様のお人柄や生き方が自然と伝わってくるように感じられました。ご家族もその想いにうなずかれ、「せっかくなら母らしいお別れにしたい」と、前向きに受け止めてくださいました。
故人様の前に整えられた思い出スペースには、手仕事の温もりとご家族の想いがやさしく重なり、ご家族が自然と集まり、懐かしそうに思い出話を交わされていました。編み物や縫物を通して家族の暮らしを支え、日々の中で人と人とをつないできた故人様。その存在があったからこそ生まれたご家族の絆や時間が、静かな空間の中で改めて感じられるひとときとなっていました。

お別れは悲しみの時間であると同時に、故人様がこれまでつないできた縁を、家族の中でそっと確かめ合う時間でもあります。思い出の品を前に語られる言葉や沈黙の中に、故人様が今もご家族の中で生き続けていることを、私たちも感じさせていただきました。

お別れのかたちは、ご家族ごとに異なります。だからこそ私たちは、そのご家族、その方にとって何が一番ふさわしいのかを、これからも丁寧に考え、寄り添い続けてまいります。皆様とともに、故人様がつないできた想いと縁を大切に受け継ぎながら、心の通うお見送りをお手伝いしていきたいと、改めて感じたひとときでした。

2026年2月 I家様(担当:近田)