富田斎奉閣
方向音痴なあなたへ
参列者の多くが涙を拭いながら、静かに耳を傾けていらっしゃいました。奥様が喪主挨拶で語られた一言が、会場にいらした皆様の涙をさらに誘いました。
「普段は遠回りばかりする人だったのに、最後だけは近道をして天国へ行ってしまいました。」
その言葉には、故人様への深い愛情と、あまりにも突然の別れへのやりきれない想いが込められていました。
初めてご自宅へお打ち合わせに伺った際、遺影のお写真をお預かりしました。候補に挙がった二枚はいずれも素敵な表情で、奥様とご両親はどちらにするか迷われていました。
「こっちのほうが格好いい」「こっちの方が本人らしい」そんな会話を交わされるお姿からは、故人様をどれほど大切に想ってこられたかが、ひしひしと伝わってまいりました。
また、想い出のお写真を貼り付けたコルクボードを飾りたいとのご要望をいただき、式場に飾らせていただきました。そして娘様方がコルクボードと一緒にご準備されたのは、故人様が大好きだったパインアメでした。

ご参列の皆様にお父様の好きだったものを手に取っていただくことで、自然と故人様との思い出話に花が咲くように――。そんな温かな願いが込められていたのではないでしょうか。
通夜当日、カゴいっぱいにご用意いただいたパインアメは、多くの方がお持ち帰りになりました。きっと娘様方のお気持ちは、皆様の胸にしっかりと届いたことでしょう。
さらに、通夜前、通夜後、そして葬儀開式前と、参列の皆様にはお棺の蓋へメッセージを書いていただきました。故人様の会社関係の方々、娘様のサッカー関係の皆様、ご友人の方々――本当に多くの方から言葉が寄せられました。その一つひとつに込められた想いを、故人様もきっと喜んで受け取っておられたことと思います。

そして迎えたご葬儀当日は、バレンタインデーでした。
大切な思い出の品々とともに、お二人の娘様から手作りのバレンタインチョコレートをお持ちいただき、故人様は旅立たれました。

ボードの写真の中にあった短冊に書かれた願いは、叶ったのでしょうか。ご病気がわかってからも、ご家族様は少しでも多くの思い出をと、日々を大切に過ごしてこられました。どうかその願いが、ご生前に届いていたことを、心から願わずにはいられません。
2026年2月14日 K家様(担当:遠藤)