亀山斎奉閣
一般葬
「本当は聴きたかった」「本当は聴かせたかった」
打合せの際に喪主である長男様から「ギターを演奏しながら1曲歌わせてもらえないか」との依頼がありました。「もちろんです。ぜひお願いします!」と即答いたしました。
詳しく経緯をお伺いしたところ、長男様は若かりし頃から本格的に音楽活動を行っておりCDアルバムの配信などもされているとのことでした。お母様もそのことはご存知だったのですが気恥ずかしさもありお母様の前で歌ったことは一度もないまま時が過ぎてしまったそうです。
生前にお母様が長男様の奥様へ「息子が音楽活動をしていたのは知っているけれど、一度も歌を聞いたことがないなぁ」とおっしゃられたことがあったそうです。そのことをお母様がお亡くなりになられた翌朝思い出し、長男様へ伝えたそうです。それを聞いた長男様はお通夜の席でお母様に向けて感謝の気持ちを込めて歌を送りたいと思ったそうです。
通夜のご挨拶に続けて「駅」というオリジナル曲を歌っていただきました。
「母の故郷である東北を思いつつ、寒い冬に降る雪がこの別れの時に母の心にも美しくよみがえってくれるのならと、そのような思いで歌わせていただきました」とおっしゃられていました。
演奏が終わった際に拍手ではなくお母様へ向けて「ご苦労様でした!」の声が飛び交い大変感動いたしました。
夫のため、息子のためと、自分のことはすべて後回しにしていた、とても思いやりの深いお母様の人生は、なにか北国でしんしんと降り積もる雪と重なるともおっしゃられていました。
私も司会の位置から聞かせていただいていたのですが、歌の途中に普段泣くことなどなかったというお父様が大粒の涙を流して聞いてらっしゃったことにもとても胸を打たれました。
祭壇には長男様の奥様が作成され、お母様が生前いつも眺めてらっしゃったフラワーアレンジメントも飾らせていただきました。
家族の「歌」と「花」と「涙」に包まれたとても心温まる感動の式となりました。
2024年8月7日 山口家様(担当:森山)