いなべ斎奉閣
長生きしてくれてありがとう。
故人様は、満107歳でした。
そのため、100歳になった時、当時の総理大臣だった安倍晋三首相より賞状をいただいたそうです。
打合せの時、親戚の皆様がおめでたい物だし飾ったり出来たら良いねという会話が聞こえてきたため、喪主様に「良かったら式場の入り口に飾りませんか。」と提案させていただきました。
合わせて、同じ鴨居の所に酉年の色紙があったため、「こちらも一緒に飾りませんか。」と聞いた所、喪主様が「この色紙好きだったんだよ。」と言っていただいたので、一緒に式場の入り口に飾りました。
生前は故人様を喪主様お一人で介護をしておりました。その為、介護や家事など様々なことが喪主様お一人でできるようになりました。
しかし、故人様が2年ほど前に体調を崩されたため、入院する事になりました。
入院してからも、「早く家に帰りたい。」と言っていたのですが、喪主様もちょうど地元の役をしていたため、願いを聞いてあげられなかったと少し悔やまれていました。
夏頃、少し落ち着いてきたこともあり、家に戻る話を先生としました。しかし「この猛暑で家に帰るのは心配なので、もう少し待ちましょう。」と一旦は断念しました。
そのため、家にあったまだ着ていない服を、せっかくならと病院に持っていきいろいろと着せてあげていたそうです。
喪主様は「自己満足かもしれないけど、いろいろ着せてあげたいと持って行っていただけ」と言っていましたが、看護師さんからは、「オシャレさんですね。」と言われていたそうで、少し照れくさそうに微笑んでいました。
そして秋になり、「そろそろ家に帰れるのでは。」と考えつつも、地元の役も忙しさも増し、年末で役も終わるため、もう少し待っててと話していた所、この10月に亡くなったそうです。
願いを叶えてあげられなかった事が、心残りと話されていました。
107歳という年齢とはいえ、喪主様からしたらたった一人の母親です。最期はご親族皆様がありがとうとお声を掛けながら、旅立たれました。
2024年10月17日 M家様(担当:神内)