伊賀斎奉閣
家族葬
笑顔が咲いた 最期のお祝いの時・・・
故人様は、お花が大好きな方でした。
自宅のお庭はいつも色とりどりの花々に囲まれ、四季折々の彩りに満ちていました。日課のように毎日お花のお世話をされていたその姿は、ご近所の方々にも親しまれていたそうで、道を通る人たちからよくお声をかけてもらっていたと伺いました。ご家族様は、「母は本当にお花のように明るい笑顔で、私たちに接してくれる人でした」と語っておられました。
だからこそ、「お花がたくさんのお葬式にしてあげたい」「最後は家族みんなで送ってあげたい」――そんな想いを強くお持ちだったのだと思います。お葬式の打ち合わせの際、ご家族様からは、「最後まで家族だけでしっかりお別れをしたい」というお気持ちが伝えられました。
その想いに応えるべく準備を進めていた中で、通夜後、ご家族様から、ある大切なことを教えていただきました。それは、故人様が亡くなられたのが4月21日、そして翌日の22日が91歳のお誕生日だったということです。
「お母様は、今日お誕生日だったのですね。ケーキなどお好きでしたか?」と伺ったところ、「実は、亡くなる前日にもう危ないかなと思って家族で母のお誕生日会をしたんです。そこで母はケーキも食べてくれました。お祝いできて本当によかったです。」とお応えくださいました。
「そうだったのですね。皆さんでお誕生日会ができて本当によかったと思います。お母様もきっと喜んでくれてますね。」
そのやり取りが心に残り、「喪家様へ何かできることはないか」と考えを巡らせていたとき、ふと思い出したのが家にあった折り紙でした。私はその折り紙で、小さなショートケーキを作り、葬儀当日の朝、ご親族の皆様がご来場された際にお渡しさせていただきました。
すると、ご家族の皆様は予想を超えて喜んでくださり「もう本当に言葉が出ません」と、涙ぐみながら感謝のお言葉をくださいました。折り紙で作ったケーキを手に、故人様とたくさんお写真を撮ってくださったその姿が、今でも忘れられません。また、ご参列の方々も、故人様のことを思い出しながら話してくださいました。
「お花が好きだったので服も花柄が多かったし、持ち物もかばんや杖も花柄でした。本当にお花が好きだったんだなと思っています。」まさにその言葉の通り、このお葬式は、ご家族様とご参列の皆様の温かな想いがそのまま形になったような、そんなやさしい時間でした。
お葬式に際し何かご提案をさせていただき、お客様にとって少しでも喜びが生まれ、笑顔が増える瞬間に立ち会えることが、何よりもうれしく感じます。そしてこのたびも、喪家の皆様の笑顔を見ることができ、ご家族の皆様の温かさを身をもって感じられたご葬儀となりました。
私にとっては、本当にこの気持ちを忘れずに、これからも心を込めてご葬儀のお手伝いをしていきたいと思える、かけがえのない時間でした。
2025年4月23日 担当:兼本