富田斎奉閣
パッチワーク、最後の作品
故人様は、40年にわたりパッチワークの教室を主宰されていた方でした。
長い年月の中で生み出された作品の数々は、布一枚一枚に思いを込めた、まさに“手仕事の芸術”そのものでした。
パッチワークだけでなく、ステンドグラスや絵画など、多才な創作を通して人生を豊かに彩ってこられたお姿が、ご家族のお話から静かに伝わってきました。
ご葬儀にあたっては、「家から送り出すのは初めてで、葬儀のことはよくわからなくて…」と、ご家族様は不安なお気持ちを抱えていらっしゃいました。
私は、そんなご家族様のお力になれればと、ひとつひとつ丁寧にお話を伺いながら、準備を進めてまいりました。
「ぜひ作品を飾りたい」というご希望もあり、大きな作品がひとつあるのだけれど、それを飾れるものがありますかとご相談を受けました。
会場の広さや見栄えとのバランスを考え、ちょうど良いサイズの展示用具をご用意し、無事飾らせていただくことができました。
ご家族様は「ぴったりだね、いいね」と、安心された笑顔でお喜びくださいました。
思い出コーナーには、故人様が手がけられたステンドグラス作品も飾られ、ご家族からは「家にもまだたくさんあるんですよ」と、穏やかに語られていました。
その空間はまるで、故人様の小さな個展のようで、訪れた方々が一つ一つの作品に足をとめては、懐かしそうに語らう姿がありました。
ご参列された教室の生徒さんたちは、「作品を見て話ができてよかった」「パッチワークの教室では、作品作りも勿論楽しかったけど話をしてる時間も楽しかったね」と、笑顔で故人様との思い出を語ってくださいました。
教室は、ただの習い事の場ではなく、人と人とを結ぶ大切な場所だったのだと、皆さまのお話からしみじみと伝わってきました。
そしてこのご葬儀のひとときもまた、故人様を中心に人がつながり、想いが交わされる、もうひとつの“出会いの場”となっていたのだと思います。
ご葬儀は、まるで“人生の作品展”のようでした。
生涯をかけて創り上げた一つ一つの作品が、今、集まった人々の心を静かに結び、笑顔と涙を誘っていました。
その場にご一緒させていただき、故人様の歩まれた豊かな人生に触れられたこと、そしてご家族の想いをかたちにするお手伝いができたことに、心から感謝しております。
2025年6月25日 生川家様(担当:髙木)