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和ごころ末広

思い(想い)おこせば

公開:2025.08.13

ロビーに展示された塗り絵。そこには優しい手つきで丁寧に色が塗られた、まるで命が宿っているかのような作品が飾られていました。それは、故人様が生前、静かに時間をかけて仕上げたものでした。器用なその手が描いた色彩は、まるでご自身の人柄を映し出すかのように、あたたかく、優しさに満ちていました。

 

棺のそばには、思い出の写真が机いっぱいに飾られていました。集まったご親族や参列者は、写真を眺めながら自然と笑みをこぼし、「あの時もこんな優しい表情をされていたね」と、故人様との思い出を語り合いました。

 

 

故人様の大切なお孫様が手にしたメロンソーダ。生前、故人様が大好きだったその飲み物を、「おばあちゃん、好きだったよね」と言って、ゆっくりとグラスに注いでくれました。やさしい炭酸の音が静かに広がる中、会場にはどこか懐かしく、あたたかな空気が流れました。
まるで故人様が「きゅつけてなー(気をつけてなー)」と優しく声をかけてくれたかのようでした。

 

 

ご家族様から故人様へは、心からの「今までありがとうございました」のひと言が静かに届けられました。そのお言葉には、深い感謝と愛情が込められていました。

そして、喪主様が参列いただいた皆様に持ち帰っていただけるようにたくさん用意された写真は、多くの方が手に取られ、あっという間になくなりそうなほどでした。まるで、皆様が「この人を忘れたくない」「手元に置いておきたい」と願うように、写真は次々と配られていきました。その一枚一枚が、故人様のあたたかな人生の証であり、参列された方々の心に深く刻まれていったことを感じさせてくれました。

 

そして、思い出コーナーでの展示をご提案した際には、ご家族様も「ぜひ飾りたいです」と喜ばれ、台の上に塗り絵や写真が整然と並びました。中学生のお孫様がソーダを注ぐ姿を見つめながら、「母も喜んでいるといいな」と静かに呟かれた喪主様の言葉が私の胸を打ちました。

 

お葬式にあたり、K家様からは、故人様への想いをかたちに残すことができる、オリジナル楽曲『ラシメロ~らしいメロディ~』の制作をご依頼いただきました。

『ラシメロ』とは、ご家族様の想いを元に制作される世界にひとつだけの歌―『故人様らしいメロディ』で、ご葬儀で流すことで、参列された皆様が故人様への想いを共有していただけるものです。

 

葬儀の準備という忙しさの中で、故人様を思い出す時間を取ることは、喪家様にとって簡単ではありません。けれど今回は、「ラシメロ」を通じて、「きゅつけてなー」と語りかけてくるような故人様のお姿を、ご家族様がゆっくりと思い出されていくお時間を持っていただけたこと、そのきっかけをお手伝いできたことを嬉しく思っています。

 

 

ご家族様が、思い出を語り始め、写真を飾り、飲み物を用意し、そして「今までありがとう」と伝えられるまでの時間。そのひとつひとつから、故人様への深い愛情と、別れの儀式に込められた意味を改めて心に刻ませていただいたご葬儀でした。

2025年8月5日 K家様(担当:岡﨑)