鈴鹿中央斎奉閣
おなか一杯になってね 心づくしの贈り物でお見送りした温かなお葬式
ご家族様から故人様のことを伺う中で、うなぎがお好きだったというお話があり、「うなぎをお棺に入れてあげたい」とのお気持ちをお聞かせいただきました。
通夜ではうなぎのお供えはなかったため、私からお声をかけたところ、「焼きたてのうなぎを持ってきたい」とご葬儀当日にご準備されるとのこと。当日、ご家族はいつも通われていたお店が休みだったため、別のお店に足を運び、「お葬式に使うんです」と伝えると、すぐに焼きたてを用意してくださったそうです。
また、故人様はお酒もお好きだったとのこと。葬儀当日の朝、ご遺影の前に置かれていたお酒を見て、「これをぶっかけようと思っている」とご家族が冗談交じりに話されました。私はそれほどお好きだったならばと、紙コップに入れて棺に納めることをご提案し、さらに末期の水の代わりにそのお酒を用いて、ご家族やご近所の親しい方々にも故人様のお口を潤していただくことをお勧めしました。購入されたうなぎやお寿司も故人様のそばにお供えするようにし、皆様のお気持ちをかたちにするお手伝いをさせていただきました。
ご家族はその提案を喜んでくださり、お棺にお花を入れ終えた後、ご家族ご親族はもちろん、ご近所の方々にも末期のお酒をしていただきました。お通夜に合わせて病院から退院された故人の奥様をはじめ、皆様方が涙ながらにそのひとときを過ごされる様子は、故人様への深い愛情があふれる場面となりました。
「お父さんもおなか一杯やな」と、満面の笑みでお話しされるご家族の言葉に、今回のご葬儀がどれだけ故人様への愛に満ちていたかが伝わってきました。焼きたてのうなぎや美味しそうなお寿司の盛り合わせ、美味しいと有名なお菓子もたくさんお棺に納められ、ご家族の心が込められたお見送りとなりました。
担当として、故人様の人柄やご家族との絆を大切にしながらお手伝いをさせていただけたことに感謝しています。ご家族様の心からの喜びを目の当たりにし、「故人様にも少しは喜んでいただけたのかな」と、あたたかな余韻を感じるお見送りでした。
2025年8月13日 T家様(担当:倉田)