名張斎奉閣
お母さんと愛犬ココちゃんの合同葬
故人様は兵庫県今津のご出身で、7人姉弟の三女として誕生されました。戦争で家を焼かれ、奈良・桜井へと移り住まわれ、その後は現在のお住まいで長く時を過ごされました。非常によく働かれる方で、姉弟たちの面倒をよく見る、頼りがいのある存在だったと伺いました。
ご家族にとって故人様は、「きっちりした性格で几帳面。自分の信念を曲げない人だった」と語られるほど、真っすぐで芯の強い女性でした。とくに息子様にとっては、厳しく育ててくれたお母様であり、またご自身のお子様たちの面倒をよく見てくれたおばあちゃんでもありました。
また、人だけでなく動物にも深い愛情を注がれていて、家族同然に大切にしていた愛犬のココちゃんとルルちゃんのお世話も、「犬の世話せなあかん」と自ら進んで散歩に連れて行くなど、家族にとっても動物たちにとっても、かけがえのない存在だったことが伝わってきました。
そんな故人様のご葬儀の打ち合わせをしていた最中、別室から「息してない!」という声が上がりました。確認すると、なんと愛犬ココちゃんもこのタイミングで息を引き取ったのです。家族を二重に襲った深い悲しみ。その時のご家族様の動揺は、言葉にできないほどのものでした。
この状況を受けて、私は「故人様とココちゃんの合同葬をご提案しよう」と決意しました。お預かりしたお写真をもとに、故人様とココちゃんの思い出を一つひとつ丁寧につなぎ合わせたスライドショーを作成。式場には故人様と愛犬ココちゃんの遺品を展示、焼香所には遺影を並べて設置しました。
この遺影設置については、事前にはお知らせしていなかったサプライズ演出でした。「お預かりした写真を拡大して遺影にしてみました」とお伝えした時、「ここまでしてくれるんや」とご家族の方がぽつりとおっしゃったその声が、私の胸に深く残っています。
お式の最中、ご家族様は涙ながらに故人様とココちゃんを偲ばれていました。二つの命を同時に見送るという深い悲しみの中で、少しでも心が癒されるようなお時間となっていればと、心から願うばかりです。
ご家族の皆様、このたびは大切なご葬儀のお手伝いをさせていただき、誠にありがとうございました。ご提案に喜んでいただけたこと、そしてご家族の皆様の深い愛情にふれられたこと、心より感謝申し上げます。
2025年9月9日 井上家様(担当:𠮷川)