伊賀斎奉閣
百寿のお祝いに故人がお好きだったミニ囲碁を添えて
真面目一筋の人生を歩まれた故人様は、郵便局長としてのご活躍をはじめ、叙勲や百歳のお祝いなど、数々の栄誉に輝かれました。その中でも、百寿の際には、内閣総理大臣から銀杯を贈られるという、まさにご生涯の歩みにふさわしい節目を迎えられた方でした。地域においても信頼厚く、まっすぐで実直なお人柄は、多くの方々に慕われていました。
ご家族にとって故人様は、まさに「一家の大黒柱」。ご家庭では仕事一筋で家族を支えられ、さらに菩提寺である広禅寺の檀家総代としても尽力され、地域に対しても大きな貢献をされてこられました。そのお姿は「頼りがいのある存在」そのもので、ご家族にとっても地域にとっても、なくてはならない方だったことが伝わってきました。
ご葬儀に際して、ご家族様は「最後は苦しまずに眠るように安らかに旅立ったので、少し安堵もしています」と、静かに語っておられました。その穏やかな旅立ちに、ご家族の方々も心のどこかで救われていたのかもしれません。
そんな中、ご家族様は故人様の表彰状や銀杯の展示について、「本当にしていいのか」と悩まれていました。私からは「ぜひ展示しましょう」とご提案し、賞状や銀杯をお預かりいたしました。さらに、故人様が生前お好きだった囲碁のお話をお聞きし、「ミニ囲碁を添えてみよう」と考えました。
囲碁の展示をご覧になったご家族、特に喪主様にはとても喜んでいただけました。大きな囲碁台を飾ることは難しかったため、「ミニ囲碁」をサプライズで添えることにし、いくつかのお店を回ってようやく見つけた時には、私自身もほっといたしました。ご葬儀の後、ご自宅へのお供えとしてミニ囲碁をお渡しした際、ご家族様の喜ばれる姿に、胸が熱くなりました。
故人様のご趣味である囲碁や銀杯を通じて、そのお人柄や歩まれた人生を感じていただけるご葬儀となりました。葬儀というかけがえのない時間に、こうして故人様の想いを形にできたことに、深く感謝しております。
2025年9月19日 H家様(担当:黒田)