富田斎奉閣
書と吟と笑顔に彩られた人生
習字と詩吟を愛し、その世界に深く親しまれていた故人様は、約40年前から書道を始められ「松永朝渓」という雅号をお持ちになるほどの実力の持ち主でした。展覧会への出展を重ねられ、多くの人の心に残っていたのではないでしょうか。
甘いものや果物を好み、明るく、誰とでも打ち解けるお人柄。よく手を叩きながら大きな笑い声を響かせる姿が、皆の記憶に生き生きと残っている、そんな温かな方でした。
ご家族様にとっては、まさに「頼りがいのある存在」。その存在の大きさと、支えられてきた日々を思い、「今まで本当にありがとう。お疲れさまでした」と、感謝とねぎらいの気持ちを穏やかに語ってくださいました。
ご葬儀にあたっては、ご家族様より「写真がかなりたくさんある」とのご相談をいただきました。私は、その一つひとつが大切な思い出であることを感じ、できる限り多くの写真を飾っていただけるようご案内いたしました。
「たくさんある写真の中から厳選したものを、参列者の皆さまに見ていただけて嬉しかった」とおっしゃるご家族様の表情からも、故人様を囲む時間がどれほど大切だったかが伝わってきました。
式場では、「右下の笑顔で笑いあう写真がとても素敵ですね」と私が声をかけたところ、「いとこが撮ってくれた写真で、賞ももらったんですよ」とお話しくださる一幕もありました。写真一枚一枚が、人生の光景を物語る宝物であることを、改めて感じさせられました。
また、参列された方の中には、写真を見て「いい写真ばかり選んでくれている」と涙を浮かべる方もおられ、その一言に、故人様がどれだけ多くの人の心に温もりを残されたかが、静かに伝わってまいりました。
想い出話に花を咲かせながら、穏やかに故人様を囲まれていたご家族・ご親族の皆様の姿は、今も胸に深く残っています。このような大切なお別れの時間に立ち会わせていただけたこと、心より感謝申し上げます。
2025年10月4日 M家様(担当:髙木)