鈴鹿中央斎奉閣
地域に尽くし家族を想い続けた生涯 手作りの優しさが溢れるお別れのとき
地域に深く根ざし、ものづくりと奉仕の精神で人生を歩まれた故人様。お仕事の傍ら、公園のベンチや棚を作るなどのボランティア活動に精力的に取り組まれ、お孫さんのために野球のネットまで手作りされたその手は、まさに“地域の手”として多くの方々を支えてこられました。器用で誠実だった故人様は、長年務められたお寺や神社の世話役を勤め上げ、伊勢神宮の「お木曳」や「白石持行事」にも参加され、表彰や記念品を贈られるほどのご功績を残されました。退職後は家庭菜園に精を出し、丹精込めた野菜を育て、暮らしの中にも豊かさと温もりをもたらしておられたそうです。
そんな故人様は、ご家族にとってもかけがえのない存在でした。娘さんが幼い頃には、庭のもみの木をクリスマスのために掘り起こして飾りつけ、終わるとまた庭に戻して育てるという心のこもったひととき。家族が喜ぶことをいつも率先して行う、優しく、真面目で、頼りがいのあるお父さんでした。
ご葬儀に際し、ご家族様からは「お父さんの棺に、我が家のレシピで作った卵焼き入りのお弁当を入れてあげたい」という、あたたかいご希望をいただきました。その想いに応えるように準備を進める中、家族葬とのご希望に沿ってご案内をしていたものの、一般の方々からのお問い合わせが相次ぎました。
そのことに私がふと、「お問い合わせには家族葬とご案内させていただいておりましたが、沢山の方がいらして本当に人望厚い方だったのですね。」とお声がけしたところ、ご家族様もうなずかれ、故人様が築いてこられた人とのつながりの深さをあらためて感じる時間となりました。
実際、式場には「どうしてもお参りしたくて…」と、涙を浮かべながら訪れる方が多くいらっしゃいました。地域の多くの方々に慕われ、故人様のお人柄がいかに深く人々の心に刻まれていたかを物語る光景でした。
式場には、故人様の生き方を感じられるよう、ボランティア活動の写真や、手作りの作品を展示し、ご家族の想いが詰まった空間となるよう心がけました。展示をご覧になったご家族様は静かに頷きながら、時折微笑まれ、故人様との想い出に浸っておられるご様子が印象に残っています。
このご葬儀を通じて、私はあらためて“人が人を想い、支え合う”という絆の尊さを感じました。多くの人々から惜しまれ、愛されてきた故人様。そして、その姿をしっかりと受け継がれているご家族様のあたたかさに触れさせていただき、心から感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
2025年9月13日 N家様(担当:木全)