阿倉川斎奉閣
真面目だからこその愛のカタチ
「この人以上に真面目な人はいないというくらい真面目な人だった」とご家族様が語られるそのお人柄は、まさに人生そのものを表しているようでした。何事にも誠実に向き合い、日々を丁寧に積み重ねてこられた故人様。現役を退かれてからは趣味らしい趣味はなかったといいますが、農園で畑仕事を始められ、土に触れる時間を大切にされていました。

ご家族の中では、腕を組んでじっくり考え、時にカッコイイことを言ってくれる存在だったそうです。けれどもご家族様は「みんなそれを聞き流していたけれど」と、どこか照れくさそうに微笑まれました。そのやり取りこそが、ご家族ならではの温かな距離感だったのだと感じます。
故人様の奥様が先に旅立たれた後、ご家族様は故人様がハンバーグ好きだったと初めて知り、「びっくりした」とおっしゃっていました。実は故人様の奥様はハンバーグはお好きではなかったようで、食卓には出ることはなかったそうです。そういったこともおっしゃらず、そんな控えめなところもまたお父様らしいと感じられ、改めてその存在の大きさと愛おしさを噛みしめておられるご様子でした。

お打ち合わせの中で私は、真面目に畑仕事に向き合ってこられた故人様への手向けとして、野菜や種を式場に飾ることをご提案しました。するとご家族様は「近所の人に、次何作ろうかと話していたんです、とても喜ぶと思います」とおっしゃってくださいました。そのお言葉から、畑仕事が単なる趣味ではなく、地域とのつながりそのものだったことが伝わってきました。また、日々のご様子について「コーヒーを飲んで新聞をしっかり読むことが日課だった」「作った野菜は、家族や近所の人たちに配っていた」と教えてくださいました。

式場には、季節の野菜や種袋、故人様が好きだった物が供えられ、故人様への感謝の気持ちが表れていました。きっと今日も腕を組みながら、静かに皆様を見守っておられたことと思います。

ご遺族様のお話を通して、故人様がどれほど真面目で、ご家族想いな方だったかが深く胸に響きました。派手さはなくとも、日々を誠実に生き、家族や近所の方々に惜しみなく分け与える。その積み重ねこそが、かけがえのない「愛のカタチ」だったのだと感じます。
大切なご葬儀をお任せいただき、故人様の歩みとご家族様の想いに触れさせていただけたことに、心より感謝申し上げます。
2026年2月12日 M家様(担当:伊藤)