鈴鹿中央斎奉閣
一般葬
約束のホームコンサート
先日、M家様のご葬儀を担当させていただきました。 こちらのご家族様は、一芸に秀でた方が多く、茶道、落語、ピアノ、スポーツなど多種多様でした。 皆様がこのような事に打ち込めたのもお父様のおかげであるとお伺いいたしました。 お父様は家族を常に一歩下がった位置で支え、家族みんなが、好きなことに打ち込める環境をこれまで築き上げられたそうです。 そんな大切なお父様が、天国へと旅立ちました。 お父様は4年前に病が見つかり、それから先日まで日々病と闘っておられたそうです。 そんな折、茶道教室を営む奥様の教室で、皆様とホームコンサートが開催されることになりました。その日お父様は体調のこともあり、2階でお休みになられていたそうですが、ホームコンサートが終了すると1階に降りて来られ、アコーディオン奏者の方にある1曲をリクエストしたそうです。しかしその時は違う楽譜を用意しており、お父様のリクエストにお応えすることができませんでした。このアコーディオン奏者の方との出会いは、元々は家庭教師として出会われ、後にアコーディオン奏者である事が分かり、より親密になったとお伺いしました。 その後、2回目のホームコンサートの日が決まり着々と準備が進められ、お父様がリクエストした楽譜も用意し、後はお父様に聴いていただくのを待つだけとなりました。それをお父様も非常に楽しみにし生きる糧にしていたそうです。 しかし2回目のコンサートの日、7月22日が非情にも告別式の日になってしまったのです。 当然ホームコンサートも中止し告別式をということになりました。 しかし告別式+ホームコンサートを開催するというのはいかがでしょうか?とご提案しました。当初は家族、親族様のご参列でと考えていらっしゃいましたが、7月22日のホームコンサートに招いていた皆様にも参列いただけることとなり、予定通りホームコンサートは開催されました。 お父様は常々、ピアニストの娘様に自分を天国へと送り出すときにはこの曲をと、ある1曲をリクエストされていました。そのこともあり、ホームコンサートは、ピアノ奏者とアコーディオン奏者で行われるプログラムとなりました。 楽曲はピアノ「悲愴ソナタ」、アコーディオン「枯葉」です。 私はこんなお話しを伺ったことがあります。「人は荼毘に付すまでは、耳は聴こえているんですよ」と。お父様は聴こえていたはずです。嬉しかったはずです。 こうして無事ホームコンサートは終えることができ、ご家族皆様がお父様に感謝の気持ちで一杯でした。 奥様との会話で印象に残っていることがあります。「皆様、多種多様な趣味をお持ちですが、お父様のご趣味は何だったのですか?」とお聞きしたとき、即「私(奥様)かな(笑)。それと家族が趣味。」と答えられました。このお返事に全てが凝縮していましたし、これからもずっと家族皆様の心にはお父様が居ることを確信し、安心しました。約束のホームコンサートの日は、「愛」と家族の「絆力」を見せていただき、感動のご葬儀となりました。
2021年7月22日 M家 (担当:豊田)