上に戻る

和ごころ末広

家族葬

自慢のおばあちゃん

公開:2022.12.22

「おばあちゃんの作品を飾ってほしいです。」 喪主である娘様とお孫様が見せてくださったのは、大好きだった故人・渡並郁子様(となみ いくこ様)の書道の作品でした。 昭和9年に名古屋市の下駄屋の長女として生まれた故人様は、待望の第一子として大事に育てられました。 しかし、幸せな時は長く続かず太平洋戦争が始まりました。空襲や食糧難を生き抜きましたが、進学の希望も叶わず15歳で強制的に就職させられたそうです。 就職後も子供の頃から趣味にしていた習字は続け、勤め先の社長が郁子様の字をたいへん気に入り、よく代筆を任されていたのが自慢だったそうです。 67歳まで仕事を勤め上げ、三重県に移住後は大好きな書道と向き合う時間が増え、なんと自宅で毎日6時間も習字をされていたそうです。 さらに上級者が集う名古屋の書道学校にも通い、そこで出会ったお友達とランチに行ったりと毎日を楽しく過ごされていました。 学校に通い学ぶこと、美味しいものを皆と食べることなど、青春時代にできなかったことを晩年でやっと実現され楽しそうだったと喪主様は当時のご様子を語られました。 中原中也の詩を引用した「風」という作品で桜花賞というたいへん名誉な賞を受賞されたり、その他にもいくつかの賞を受賞するなど輝かしい経歴の持ち主でした。しかし師範として教える側に立つことは一切なく、生涯生徒として学んでいく向上心溢れる考えをお持ちでした。喪主様やお孫様はそのような向上心に満ち溢れた生き方をする郁子様をたいへん尊敬しており、仕事や人生のお手本にしているそうです。 私は、「作品を飾るのはもちろん、せっかくなので故人様愛用の筆なども一緒に飾って、もっと深く故人様のことを知ってもらいましょう」と提案いたしました。 今回は家族葬で数名様のご葬儀でしたので、会場の外に作品や書道関連のグッズを飾るのではなく、式中もずっと皆様に見ていただけるよう、祭壇の傍に展示させていただきました。ご遺族も想像以上に華やかになった会場に喜んでいただいたご様子でした。この感動葬儀レポートを通して、「おばあちゃんの素敵な作品をぜひ見てほしい!」という、お孫様の真っすぐな熱い思いを受けご紹介させていただきました。 2022年12月19日 上野家(担当:道内)