宗派別の葬儀

浄土真宗の葬儀の流れや参列する際の注意点・マナーを徹底解説

公開:2022.12.15
浄土真宗の葬儀の流れや参列する際の注意点・マナーを徹底解説

日本には数多くの宗教があり、同じ数だけ葬儀の形があります。

しかし自分の家系の宗教や宗派を知っていても、具体的にどのように執りおこなうべきかわからない、という方も多いのではないでしょうか。

たとえば仏教のなかには浄土真宗と呼ばれる宗派があります。

自分の家が浄土真宗であることは知っていても、その特徴や葬儀の作法については詳しく知らず、いざというとき不安だという方もいることでしょう。

この記事では、浄土真宗の特徴について解説するとともに、葬儀の流れやマナー、参列する際の注意点などについて触れていきます。

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浄土真宗とは

浄土真宗とは日本の仏教の一種ですが、他の宗派と大きく違うのは「葬儀は死者を極楽へ送るためにおこなわれるわけではない」点です。

ほかの宗派であれば、死者の魂は亡くなった後しばらくは現世をさまよいます。

したがってその魂を無事にあちら側へ送るために葬儀が必要という考え方になります。

しかし浄土真宗においては、死者は亡くなると同時に極楽浄土に迎えられているので、無事に成仏することを祈る必要がありません。

葬儀における礼拝の対象は死者ではなく、阿弥陀如来です。そのため他の宗派で見られる「引導」や「授戒」は用意されていません。

引導とは、僧侶が死者を納めた棺の前で経文を唱える作法のことで、死者が悟りを開いて成仏するためにおこなうものです。

授戒とは、仏門に入るものに対し仏弟子として戒めを授けることを指します。

 

特徴

浄土真宗は、浄土宗の開祖である法然の弟子である親鸞聖人によって始められました。

親鸞聖人が亡くなったあといくつかに分派しましたが、現在では「本願寺派」と「真宗大谷派」の2派がほとんどの門派を抱えている状況です。

阿弥陀如来を本尊としており、「浄土三部経」が経典として読まれ「南無阿弥陀仏」と唱えることが特徴です。

南無阿弥陀仏という唱和についてはご存知の方も多いのではないでしょうか。

浄土真宗の教えによれば、念仏を唱えることによって、自力ではなく阿弥陀如来の本願力(他力)によって即身成仏するとされています。

この即身成仏の教えから、死者の冥福を祈る必要がないという結論へつながります。このような考えにもとづいた、他の宗派には見られない独自の作法が特徴です。

また同じ浄土真宗であっても、本願寺派と真宗大谷派では葬儀の細かい部分にいくつかの違いがあります。

 

浄土真宗の葬儀の流れ

浄土真宗の葬儀がどのようにおこなわれるのかについて見ていきましょう。前項でも少し触れた通り、本願寺派と真宗大谷派ではその内容に微妙な違いがあるので、それぞれに分けて解説します。

【関連記事】曹洞宗の葬儀とは?葬儀の流れや費用相場を分かりやすく解説

 

本願寺派の流れ

本願寺派ではまず臨終の際、末期の水を取ることはなく、故人は北枕にして寝かせます。

清拭・湯灌・エンバーミングなどの処置をおこなったあとに白服をかけ、顔にも白布をかけます。

このとき死装束は必要ありません。死亡の瞬間すでに極楽浄土にたどり着いているからです。

納棺勤行のあとに葬儀をおこないます。僧侶による読経・焼香を経て、遺族や参列者の焼香へと続くのは一般的な流れと同じです。

そのあと出棺式がおこなわれ、火葬・拾骨します。そのあとはほかの宗派と同様の回向・法要に入る場合がほとんどです。

しかし繰り返すようですが、故人は亡くなってすぐ極楽浄土にたどり着いているので、法要のたぐいは故人のためではなく、遺族の精進明けの儀式という意味になります。

僧侶に勤行をあげて短念仏を唱え、儀式が終わります。

【関連記事】死装束とは?納得できるお別れをするための注意点をお教えします

 

真宗大谷派の流れ

真宗大谷派においても本願寺派と同様、人が亡くなればすぐ極楽浄土へ行き仏になるという教えなので、「冥福を祈る」「死出の旅路につく」といった概念はありません。

したがって守り刀を持たせたり、故人に一膳飯をお供えするといったことはおこないません。

真宗大谷派の葬儀は、「葬儀式第一」「葬儀式第二」と2段階に分かれているのが特徴です。

まず葬儀式第一の「棺前勤行」をおこない、次に葬場勤行で導師による読経・焼香がおこなわれ、それから遺族や参列者の焼香へと続きます。

それから葬儀式第二をおこないますが、かつては自宅葬が主流でした。

しかし現在では少なくなっているため、式場と火葬場での勤行も地域事情に寄り添う形で組み直されています。

出棺式から回向・法要へ進んでいく流れは本願寺派と同様です。

 

浄土真宗の焼香・香典のマナー

ここでは浄土真宗の焼香や香典のマナーについて解説します。

 

焼香のマナー

御本尊の前でまず一礼し、お香を3本の指でつまむところまでは一般的なやり方と同じです。

その後の作法が、本願寺派と真宗大谷派で少し違う点に注意が必要です。

本願寺派の場合、額に抹香を押しいただかず、香炉に1回だけ落とします。真宗大谷派では、その段取りを2回続けます。

 

香典のマナー

浄土真宗では、香典の表書きを「御霊前」とは書かず「御仏前」と書きます。故人は亡くなると同時に成仏しているという考え方に基づいています。

「霊」という状態を認めていないことになります。

また冥途(冥土への道)の概念がないので、「冥土へ旅立つ」「冥福を祈る」といった言葉も使わないようにしましょう。

住職や門従は「浄土に往生された」といった言葉を使っています。

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浄土真宗の葬儀に参列する際の注意点

浄土真宗の葬儀に参列する際の注意点としては、主に以下の4つが挙げられます。

  1. 香典袋の表書きに注意する
  2. 一般的な喪服が基本
  3. お悔やみの言葉に注意する
  4. 告別式とは言わない

順番に見ていきましょう。

 

注意点①:香典袋の表書きに注意する

故人は亡くなると同時に極楽浄土に迎え入れられた、という考え方は浄土真宗のもっとも大きな特徴の1つです。

すなわち、死者の魂がこの世をさまよっている状態はあり得ないことになります。

そのため香典袋の表書きに「御霊前」と書いてはいけません。葬儀のときにはすでに極楽浄土へ到達し仏となっているので、「御仏前」と書くのが正解です。

たった1文字の違いですが、教義の根幹に関わることなので、決して間違えないようにしましょう。

「御香典」「御香料」といった表書きについては、趣旨を問わず四十九日前後いつでも対応します。

 

注意点②:一般的な喪服が基本

浄土真宗の葬儀においても、一般的な喪服が基本です。

男性の場合はブラックのスーツを着用し、靴や靴下も黒で揃え、金具などが目立たない靴を選びます。女性の場合は黒のスーツかワンピース、アンサンブルを着用し、靴やストッキングも黒を着用します。

バッグも光沢のない黒いものを選びましょう。

子供を参列させる場合、制服があればそれを着用し、なければ暗めの落ち着いた色合いの服を着用させましょう。

靴も落ち着いた色味のものを選び、歩くたびに音が出るような靴は伝えておくべきです。

また門従である場合には、門徒式章という袈裟をかけて参列する場合もあります。

着用するかは状況によって異なるので、事前に葬儀社やお世話になっている寺院に確認しておきましょう。

 

注意点③:お悔やみの言葉に注意する

繰り返し解説していることですが、浄土真宗においては亡くなった人間はすぐに極楽浄土へ辿り着くとされています。

したがって冥途(冥土に至るまでの道)という概念がありません。

そのため「冥土へ旅立つ」「冥福を祈る」「天に召される」「草葉の陰」といった言い回しは使いません。亡くなられた方ではなく、遺族の方にかける言葉を探すイメージを持っておきましょう。

【関連記事】お悔やみの言葉とは?例文やマナー、正しい使い方をわかりやすく解説

 

注意点④:告別式とは言わない

通夜の後におこなわれる儀式のことを他の宗派では「告別式」と呼びますが、浄土真宗では「葬儀式」と呼びます。

浄土真宗においては、死ねば誰もが極楽往生すると説いています。これは、故人ともいずれ極楽浄土で再会するという考え方に基づいています。

死は最後の別れを意味していないので、告別という言葉を使いません。

 

まとめ

浄土真宗の葬儀における特徴や、気を付けるべきマナーなどについて解説しました。

すべてお読みになった方はおわかりかと思いますが、浄土真宗のマナーの特殊な部分のほとんどは「死ぬと同時に極楽浄土に行く」という考え方から来ています。

この考え方をきちんと押さえておけば、基本的には大丈夫だと考えておいてよいでしょう。心配な点があれば、事前に質問しておくと安心できます。

この記事を参考にして、ぜひ葬儀を滞りなく済ませられるようになりましょう。

葬儀に関するお悩みがある方は、無料事前相談ページをご覧ください。

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この記事の監修者

笹浦久朋(ささうら ひさとも)
桑名地区斎奉閣 館長 1級葬祭ディレクター