浄土宗の葬儀の特徴や流れ、マナーについてわかりやすく解説
親しい方が亡くなられた場合、通夜や葬儀を執りおこなう、あるいは参列する必要があります。
故人が浄土宗を信仰していたのであれば、浄土宗の形式で滞りなく進めなければいけません。
しかしたとえ故人の遺族であっても、故人とは宗派が違い、浄土宗のしきたりがまったくわからないこともあるかもしれません。
いざというときに備えて、葬儀の特徴や流れを掴んでおくことは大切です。
この記事では、浄土宗における葬儀の特徴や流れを解説するとともに、参列する際に押さえておくべきマナーについても触れていきます。
目次
浄土宗とは
浄土宗は、鎌倉時代の法然上人が43歳のときに開いた念仏教です。阿弥陀如来を本尊とし、総本山は知恩院。
ほかにも全国に以下の7大本山が存在します。
- 増上寺(東京都港区)
- 知恩寺(京都市左京区)
- 清浄華院(京都市上京区)
- 金戒光明寺(京都市左京区)
- 善導寺(福岡県久留米市)
- 光明寺(神奈川県鎌倉市)
- 善光寺大本願(長野県長野市)
阿弥陀如来の本願力によって、死後に西方極楽浄土にたどり着くことを目的とすることから「浄土宗」と呼ばれるようになります。
「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば心も体も清められて仏の救済を受けられる、という教えが、当時の老若男女に広まっていきました。
「南無阿弥陀仏」を唱えるだけで、仏の救済を受け、平和の毎日を送れて極楽浄土に往生できるという「他力」の考え方は、とても革命的なものでした。
それまでの仏教は貴族やお金がある人だけのものだったのに対し、浄土宗は地位や身分とは関係なく平等に多くの人々に広まっていきました。
特徴
浄土宗の葬儀の特徴の一つとして、僧侶とともに参列者一同が故人に代わって念仏を唱える「念仏一会」が挙げられます。
「南無阿弥陀仏」を10回から一定時間唱え続けることで、故人が阿弥陀如来の救いを得て極楽浄土に往生する手助けをするのが目的です。
この儀式には参列者と阿弥陀如来の縁を結ぶという意味も含まれています。したがって信者の信仰心を深めることを目的とはしていません。
また、僧侶による「下炬引導(あこいんどう)」という儀式もおこなわれます。これは火葬の際の点火を意味するものです。
僧侶が棺の前に進み焼香をしたあと、たいまつを意味する宝具を2本取り、そのうちの1本を捨てます。
この儀式の意味は「厭離穢土(おんりえど:煩悩にまみれたこの世から離れること)」です。
そして残ったもう1本のたいまつで円を描き、「下炬の偈(あこのげ)」を読み上げ終えると同時にそれも捨てます。
この行為は「欣求浄土(ごんぐじょうど:極楽に往生したいと心から願うこと)」を表現したものです。
上記以外の部分においては、他の宗派と異なる点はほとんどありません。一般的な葬儀の常識をわきまえていれば、混乱することはまずないでしょう。
浄土宗の葬儀の流れ
浄土宗の葬儀の流れは以下の通りです。
まずは通夜ですが、これは他の宗派ととくに違いはありません。故人を北枕に寝かせ、顔に白い布をかけ、胸元には守り刀を置きます。
お線香を絶やさないように気を付けつつ、弔問客を迎え入れる準備をしましょう。
葬儀本番は「序分(じょぶん)」「正宗分(しょうじゅうぶん)」「流通分(るつうぶん)」の3段階に分かれているのが特徴です。以下はそれを順に並べたものとなります。
- 入堂:僧侶が入場する
- 香偈:お香を焚いて心を鎮める
- 三宝礼:仏・法・僧の三宝に礼をする
- 奉請:諸仏の入場をお願いする
- 懺悔偈:迎え入れた仏に自分の罪の懺悔をし、正宗分(御仏のお話)をうかがう
- 転座・作梵:ここまで本堂に体を向けていた僧侶や参列者が、体棺に向ける。その際に梵語の四智讃(しちさん)を唱える
- 下炬引導:前述の通り
- 弔辞:弔辞や弔電を読み上げる
- 開経偈:これから経文を読むにあたって、故人が御仏の教えを会得できることを願う
- 誦経・焼香:阿弥陀経の「四誓偈」あるいは「仏身観文」を僧侶が読経しているあいだに、参列者が焼香をする
- 摂益文:念仏を唱える者は阿弥陀仏の光明に照らされ利益を得られるという意味の偈文が読まれる
- 念仏一会:前述の通り
- 回向:故人の霊に念仏の功徳を捧げる
- 総回向偈:念仏の功徳一切を受けて個人の往生を願う
- 総願偈:御仏が人々を救い、極楽浄土の願いが広大であることを意味する偈文が読まれる
- 三身礼:阿弥陀仏の3つの功徳をたたえて帰依を表明する
- 送仏偈:お迎えしていた御仏を本来いたところ送るための偈文が読まれる
- 退堂:僧侶が退堂する
- 最期の対面:遺族や親族が、故人と最後の対面をする
浄土宗の葬儀に参列する際のマナー
ここでは、浄土宗の葬儀に参列する際のマナーを見ていきます。焼香・香典・お供え・服装の4つについて解説します。
マナー①:焼香
浄土宗では、焼香の回数に決まりがありません。その場の状況にあわせて決めても大丈夫です。一般的には1~3回でしょう。
まずは香炉の前で合掌と一礼します。続いて親指・人差し指・中指でお香をつまみ、上に向けます。
片方の手を下に添えて、つまんだお香を額に寄せてから、香炉に入れてください。
そしてふたたび合掌と一礼を済ませたら、焼香は終わりです。
お線香に関しても、地域の風習や僧侶の考え方により作法が違います。
一般的には1本だけ立てる傾向にあります。不安な場合は事前に確認しておきましょう。
マナー②:香典
香典を包む不祝儀袋の表書きには「御霊前」あるいは「御香典」と記載します。
その後の法事の際には「御仏前」落とすのが一般的ですが、葬儀の際に故人は未だ成仏していないというのが浄土宗の考え方なので、前述のように書きましょう。
また記載する際には、故人が亡くなったことへの悲しみを表現するために薄墨を使うのがマナーとなっています。
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マナー③:お供え
お供え物は故人を偲ぶために用意するものです。
浄土宗においては、生ものさえ避けておけば、内容についてそれほど神経質に考える必要はありません。
一般的には線香やろうそくなど、葬儀や供養に使えるものを贈るケースが多いようです。
しかしお菓子や果物、缶詰などであっても問題ありません。
生前の故人をよく知っている方であれば、故人が好きだったものを選ぶのもよいでしょう。
葬儀に参列したほかの方も、そのお供え物で故人のことをより深く思い出せるかもしれません。
葬儀場の広さには限りがあるので、あまり大きなお供え物は選ばないことをおすすめします。
マナー④:服装
男性が葬儀に参加する場合には、黒いスーツを着用します。正喪服であるモーニングコートを着るのもよいでしょう。
靴下や靴、ネクタイといったものもすべて黒で統一します。金具が目立たないものを選ぶことに注意してください。
女性も黒色の服を着るのが一般的です。スーツだけでなく、ワンピースやアンサンブルを選んでも構いません。
華やかな印象を与える服装は、葬儀にふさわしくないので避けておきましょう。アクセサリーもできるだけ身につけないのが賢明です。
お化粧も控えめにしておいたほうが場には適しているといえます。
浄土宗の葬儀のお布施
宗派によってお布施に関するマナーが異なることもあります。
そのため、お布施の額や渡すタイミングについて戸惑ってしまう方も多いでしょう。
そこで、浄土宗の葬儀におけるお布施について、おおまかな相場と、渡すタイミングについて解説します。
お布施の相場
お布施の相場には地域差もあるので明確な決まりはいえません。しかし一般的には15~20万円程度であるといわれています。
ここに戒名料は含まれていません。戒名はさらに高額である場合が多く、およそ10万円から始まり、場合によっては100万円を超えることもあります。
またお寺以外の場所(葬儀社の会場など)で葬儀がおこなわれた場合には、御車代として別途5,000~10,000円を渡すこともあります。
お布施を渡すタイミング
お布施を渡すタイミングとして適切なのは、葬儀が始まる前の挨拶のときか、あるいは葬儀後のお見送りの際にお礼を言うときです。
お布施袋の表書きには「御布施」と書きましょう。小さなお盆の上に袱紗を乗せ、その上にお布施袋を置いて渡します。
浄土宗の葬儀にかかる費用の相場
葬儀にかかる費用の相場は、200万円程度ともいわれています。
しかし実際には葬儀の規模や参列者の数などによって大きく異なるため、相場という概念はあまり役に立たないのが実情です。
葬儀費用の内訳は、祭壇や棺を含む葬儀一式の費用、接待飲食費、僧侶に渡すお布施などの謝礼です。祭壇については、白木か花祭壇にするかでかなり費用が変わるので、懐事情にあわせて選択するのがよいでしょう。
接待飲食費は、参列者1人につき3,000~50,000円が平均的であるといわれています。
まとめ
浄土宗の葬儀について、具体的な流れや気をつけるべきマナーを解説しました。
自分自身も信仰している宗派であれば勝手もわかっているでしょうが、そうでない場合にはわからないことが多く、執りおこなう側になった場合にも参列する場合にも、不安がつきまとうことでしょう。
しかしきちんと調べておくことで、滞りなく葬儀を進めることは十分に可能です。
この記事を参考にして、浄土宗の葬儀に対する備えを確かなものにしておきましょう。
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この記事の監修者
津地区斎奉閣 館長 1級葬祭ディレクター
宗派別の葬儀