日蓮宗の葬儀の流れや費用、マナーについてわかりやすく解説

公開:2022.12.20  更新:2024.02.15
日蓮宗の葬儀の流れや費用、マナーについてわかりやすく解説

故人が信仰していた宗派と、遺族が信仰していた宗派が異なる場合には、故人の宗派にあわせて葬儀をおこないます。

そのため、慣れない宗派のしきたりにもとづいて葬儀をおこわなければならない場合も少なくありません。

たとえば故人が日蓮宗を信仰していたのであれば、そのやり方で葬儀を執りおこなうことになります。葬儀社を選ぶ際にも、進め方をよく知っているところにお願いすることになるでしょうが、それとは別に自身もある程度の知識を身につけておくに越したことはありません。

この記事では、日蓮宗における葬儀の流れや費用、押さえておくべきマナーなどについて一通り解説します。

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日蓮宗とは

日蓮宗は日本全国に約4,700の寺院を有しており、信徒は300万人を超えるといわれています。

成り立ちを辿っていくと、鎌倉時代にまでさかのぼります。

日蓮宗は、日蓮聖人の名を冠した仏教の宗派です。日蓮聖人が遺したと言われる曼荼羅を本尊、『法華経』を経典としています。

「南無妙法蓮華経」の7文字は「お題目」と呼ばれ、事あるごとに唱えることで現世での幸せと、最後には仏になれることを願います。

総本山は山梨県にある「身延山久遠寺」です。

日蓮聖人は修業に励むうち、来世よりも今の生き方を問う「法華経」こそ、釈迦の真の教えであるという思いを深めていきました。

1253年、日蓮聖人は法華経を拠り所に「南無妙法蓮華経」を唱え始めます。これが日蓮宗の始まりであるといわれています。

日蓮という名前は「太陽のように明るく、蓮華のように清らかでありたい」という願いを込めて自ら名乗ったものです。

日蓮は自らの主張を通すため、他の宗派を批判することもいとわず、当時の鎌倉幕府と正面からぶつかりました。

 

日蓮宗の葬儀の特徴

日蓮聖人の教えでは、日蓮宗の中心的な拠点である法華経の功徳が込められているとされる「南無妙法蓮華経」7文字のお題目を唱える修行が重要だとされています。

「南無妙法蓮華経」を繰り返し唱えることによって、法華経への信心の深さを示せて、死後には「霊山浄土で釈迦牟尼仏にお会いし、成仏できる」というのが日蓮宗の教えです。

葬儀においても「南妙法蓮華経」お題目を唱えることが重要視されています。したがって葬儀の最中にもこのお題目が唱えられます。

葬儀の場でお題目を唱えることは、故人の生前の信心深さをたたえ、故人が無事に霊山浄土にたどり着け成仏できる手助けをすることです。

これ自体が功徳を積むことであり、修行の一環にもなると考えられています。

また日蓮宗では、戒名のことを法号と呼びます。これは「法華経に帰依することが持戒に勝る」という日蓮聖人の教えによるものです。

そのため葬儀においても授戒という作法は存在しません。代わりに信仰に入った証として法号が授けられます。

法号は本来生前に受けておくべきものですが、現在では亡くなってから受けるケースが多いようです。

 

日蓮宗の葬儀の流れ

故人が亡くなった日の夜、または次の日の夜などに通夜をおこない、その翌日に葬儀・告別式を実施するのが一般的な流れとなります。

葬儀・告別式は、遺族の集合と受付準備を含めて午前10時頃に開始され、約2時間で閉会するのが通常のパターンです。

一般的な流れとしては、まず司会者(葬儀社)による開会の宣言がなされるところから始まります。そして以下のような段取りを踏んでいきます。

  • 総礼:皆で合掌し、「南無妙法蓮華経」を3回唱え礼拝する
  • 道場偈:諸仏諸尊を迎えるための声明を流す
  • 三宝礼:仏法僧の三宝は釈迦・法華経・日蓮聖人にあると心を込めて祈る。立ったり座ったりするため起居礼とも呼ばれる
  • 勧請:久遠実乗の本師釈迦牟尼仏・菩薩・神々・日蓮聖人を葬儀の場に迎える
  • 開経偈:法華経の功徳をたたえ、教えに出会えたことに感謝する
  • 読経:法華経の重要な部分を読み上げる
  • 咒讃鐃鈸:諸仏を供養するために唄をうたい、楽器を演奏する
  • 開棺:導師が棺の近くに立って棺の蓋を叩きながら読経し、引導の前に悟りに入ることを予告する
  • 献供:茶・膳を供える
  • 引導:故人がしっかり旅立てるように棺の側で払子を3回振り、焼香を3回し、引導文を読む
  • 弔電:司会者が弔電を読む
  • 読経:法華経の重要な部分を読み上げる
  • 祖訓:日蓮聖人が遺した言葉を読み上げる
  • 唱題:「南無妙法蓮華経」を唱えながら焼香をおこなう
  • 宝塔偈:回向の前に唱え、法華経の功徳をたたえる
  • 回向:故人が仏と一体になった喜びをこの世のすべての者にささげ、霊山浄土に向かう
  • 四誓:人々を救うための4つの誓いの言葉を唱える
  • 三帰:三宝に帰依し精進することを表す
  • 奉送:諸仏諸尊を送る声明を流す
  • 閉式:導師が退場し、司会者から閉式の言葉が述べられる

ただし近年では、いくつかの項目を省略することもあります。

 

日蓮宗の葬儀に参列する際のマナー

日蓮宗の葬儀に参列する際、香典や焼香に関して気を付けるべきマナーについて解説します。

宗派によって参列時のマナーが異なることも多いため、きちんと日蓮宗の葬儀に参列する際のマナーを理解して、葬儀に参列しましょう。

 

香典のマナー

香典とは本来、亡くなった方の霊前にお供えする線香や花の代わりになるもの、という意味を持っています。

しかし現実的には、突然の不幸に対する相互扶助的な意味合いや気持ちも込められており、「亡くなられた方にお供えする金品」のことを指すようになっています。

香典のマナーとしてよく取り沙汰されるのは、香典を入れる不祝儀袋の表書きをどのように表記するかです。

宗派によってしきたりが異なり、場合によっては書いてはいけない言葉も存在します。

日蓮宗の場合、香典は葬儀のときから四十九日手前の法要までについては、「御霊前」または「御香典」と書きます。

そして四十九日以降の法要の際には「御仏前」「御香典」と書きましょう。

日蓮宗においては、亡くなられた方は四十九日で成仏されるという考え方をとるため、このような区別をします。

【関連記事】香典の金額の相場とは?故人との関係性や年齢別で解説

 

焼香のマナー

日蓮宗でよく見られる焼香のマナーは、以下の通りです。

まず遺影や棺の前で一礼し、数珠を左手に持ちながら焼香盆にあるお香を右手の親指と人差し指でひと摘み取り上げます。

次にそのお香を火種にかけましょう。それから合掌し、一礼して席に戻ります。

日蓮宗では、導師(僧侶)の焼香は3回、一般参列者の焼香は1回が基本です。ただし状況によって変わることもあります。

ほかの参列者の焼香を参考にし、臨機応変に対応しましょう。司会者が焼香する回数を伝えてくれることもあります。

 

日蓮宗の葬儀のお布施はいつ渡す?

元来のお布施とは、出家した修行者や困窮者などに施しを与えることを指します。

しかし現在では読経してくれたお礼に戒名料とあわせてお布施としているケースがほとんどです。

お布施を渡すタイミングとしては、葬儀が始まる前の僧侶へのご挨拶のとき、または葬儀終了後のどちらかとなります。

重要なのは、当日中に僧侶に直接手渡しをすることです。ほかにも、僧侶が法要後の食事を辞退された場合には、御膳料を渡すこともあります。

また葬儀が寺院以外の斎場などで執りおこなわれた場合には、お車代を渡すこともあります。

お布施の金額に決まりはありませんが、おおよその相場として、葬儀の場合は20万円と考えておくとよいでしょう。

故人とお寺の関係などによっても変わってくるところなので、直接お寺に確認するか、親しい檀家さんにあらかじめ聞いておくことをおすすめします。

 

日蓮宗の葬儀にかかる費用

葬儀にかかる費用は、人数や場所によって金額が大きく異なるため、なかなかおおまかな相場を提示するのが難しいことではあります。

家族葬にするか、職場関係者や近隣住民なども広く受けつける一般葬にするかによって、準備するものは大きく変わるでしょう。

あくまでもざっくりとした目安ですが、家族葬の場合は約60万~100万円くらい、一般葬の場合は約70万~200万円くらいが相場であると考えておいてください。

当然ながら家族葬よりは一般葬のほうが高額ですが、引き換えに多くの方から気持ちとしてお香典をいただくことになるので、実質の負担額が減り家計が助かる面もあります。

反対に家族葬は一見安く見えますが香典収入が少なくなるため、場合によっては大人数のお葬式よりも出費が多くなってしまうこともあります。

【関連記事】家族葬の費用相場とは?一般葬との費用比較や安く抑えるポイントを徹底解説

 

まとめ

日蓮宗における葬儀に関して、基本的な知識や流れ、気を付けるべきマナーなどについて解説しました。

葬儀において、故人が信仰していたものは大切に扱わなければなりません。故人が日蓮宗を信仰していた場合、遺族はたとえ何1つ知識がなかったとしても、故人の信仰にもとづいたやり方で送り出す必要があります。

この記事を参考にして、日蓮宗の葬儀に関していざというとき迷わないようにしておきましょう。

葬儀に関するお悩みがある方は、無料事前相談ページをご覧ください。

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この記事の監修者

藤田 悠(ふじた ゆう)
四日市地区斎奉閣 館長 1級葬祭ディレクター

宗派別の葬儀