老衰とは何歳から?定義やサインとなる初期症状・備えたいことを解説

公開:2022.03.17  更新:2024.08.01

老衰とは何歳から?定義やサインとなる初期症状・備えたいことを解説

「老衰(ろうすい)」とは年齢を重ねるにつれて、心身の機能が徐々に衰えていく状態のことです。
近年は医療の発達により、老衰で亡くなる方の割合が増えています。
老衰について理解を深めておくと、適切な備えができるでしょう。

この記事では、老衰とは何か、定義や前兆となる初期症状を解説します。
老衰死への備えとして準備しておきたいこともまとめているので、理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。

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老衰(ろうすい)とは

老衰(ろうすい)とは何か、3つの視点で解説します。

  1. 厚生労働省の定義
  2. 老衰死は何歳から?
  3. 主な死因としての割合が増加している理由

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

厚生労働省の定義

老衰とは、加齢が原因で徐々に心身の機能が衰えていく状態を表す言葉です。

厚生労働省は「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」において、死因としての老衰を以下のように定義しています。

【厚生労働省の定義】

高齢者でほかに記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみに用いる

このように、病気や事故ではなく、老衰が原因で亡くなることを老衰死と呼びます。
老衰死は、「寿命をまっとうした」とも表現できるでしょう。

引用元:厚生労働省|令和6年死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル

 

老衰死は何歳から?

日本では、「何歳からが老衰なのか」「何歳で亡くなったら老衰死とされるのか」といった明確な定義がありません。
そのため、老衰死であるかどうかは、死亡診断をする医師の判断に委ねられます。

昨今では、平均寿命(2023年:男性81歳、女性87歳)を超えた年齢、もしくは90歳以上での自然死を老衰死と判断するのが一般的です。
一方で、老衰死の統計分析を見ると、60代や70代でも老衰が原死因となるケースもあります。

なお、老衰による身体機能の衰えで病気になり、それが原因で亡くなった場合には老衰死ではなく病死とされます。

 

主な死因としての割合が増加している理由

老衰は、日本における主な死因の1つです。
厚生労働省の「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要」によると、老衰は死因の第3位で、2001年以降増加傾向にあります。

老衰死が増加している理由として、高齢者の増加や延命治療の疑問視が挙げられます。
医療の発展や生活環境の向上によって、人々が長生きできるようになり、最近では病院での延命治療よりも、自宅や介護施設での自然な看取りを希望する方も少なくありません。

今後も日本社会はますます高齢化が進み、老衰死の割合も増加していくと予想されます。

引用元:厚生労働省|令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要

 

老衰死の前兆(サイン)となる初期症状

老衰死の前兆(サイン)となる初期症状は、主に4つです。

  1. 身体機能の低下が進む
  2. 食事量が減る
  3. 体重が減少する
  4. 寝てばかりいる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

初期症状①:身体機能の低下が進む

老衰になると、身体機能の低下が進みます。
壮年や中年でも、若い頃に比べて身体機能に衰えを感じる方もいるのではないでしょうか。

老衰の前兆にあたる身体機能の変化には、以下のようなものが挙げられます。

  • 握力が弱くなる
  • 歩く速度が遅くなる
  • 階段の上り下りで疲れやすくなる

実際に、本人や家族が「以前より衰えたな」と感じるようなことがあれば、身体機能の低下が進んでおり、老衰死の前兆だといえるでしょう。

 

初期症状②:食事量が減る

食事量が減ることも、老衰死の前兆です。

身体機能の低下により、噛む力や飲み込む力が弱くなると、以前と同様の食事量を取るのが難しくなります。
また、活動量が減ることで空腹を感じにくいほか、味覚や嗅覚が低下して食事を楽しめなくなる方も少なくありません。

食事量が低下すると、低栄養状態になり、体をあまり動かさなくなるなどの悪循環に陥りやすいので注意が必要です。

 

初期症状③:体重が減少する

老衰死の顕著な前兆として挙げられるのが、体重の減少です。
加齢にともない、胃や腸の消化吸収機能が低下し、食事量にかかわらず栄養を吸収しにくくなります。

また、身体機能の低下とともに、筋肉量が少なくなることも体重を減少させる原因の1つです。
「最近痩せ始めたな、食が細くなったな」と感じたら、老衰死の前兆だといえるでしょう。

 

初期症状④:寝てばかりいる

老衰が進むと、寝てばかりいる時間が増えます。
身体機能が低下して体力がなくなってくると、脳機能が低下して意識を保つのが難しくなるためです。
場合によっては、脳機能の低下が幻覚症状や意識障害を引き起こす可能性もあります。

また、寝ている時間が増えると食事や活動の時間が短くなるため、老衰を加速させる原因にもなります。
老衰が進むにつれ、昼夜を問わず寝てばかりいるようになり、最終的には1日のほとんどを寝て過ごすようになるでしょう。

 

老衰の兆候が出たあとの経過と余命

老衰の兆候が出たあとには、以下に挙げる3つの経過をたどるケースがほとんどです。

  1. 通常の食事から介護食に切り替える
  2. 経鼻経管(けいびけいかん)や胃ろう、点滴などで栄養を補給する※
  3. 死去する

※経鼻経管は鼻から胃へ、胃ろうは胃に開けた穴にチューブを通し、栄養剤を投与する方法

老衰が進むと、通常の食事をとるのが難しくなるため、細かく刻んだものやペースト状の食事に切り替えるのが一般的です。
自分で食事をとれない場合は、食事の介助も必要になります。

口から食事をとるのが難しくなったら、点滴のほか、経鼻経管や胃ろうなどの方法で必要な栄養を補給します。

経鼻経管栄養や胃ろう栄養によって、長期にわたり生命を維持できるケースも珍しくありません。
一方で、点滴などを行わない場合は、口から食事をとれなくなってから1週間前後で死去するといわれています。

なお、余命を宣告された際に必要な準備について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

【関連記事】家族が余命宣告をされたらどうする?するべき準備などをご紹介

 

老衰から復活する2つのケース

老衰の兆候がでたあとに復活するケースは、以下の2つです。

  1. 中治り現象が起きる場合
  2. 老衰以外の原因を発見・治療した場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

ケース①:中治り現象が起きる場合

中治り(なかなおり)現象とは、進行していた症状が一時的に回復する状態のことです。
たとえば、「急に体を動かせるようになった」「再び会話ができるようになった」などの現象は、本人にも家族にとっても喜ばしいものです。

しかし、中治り現象は同時に死期が近づいていることを意味するものでもあります。
老衰していた状態からは考えられないような行動を始めたときは、中治り現象の可能性が高いでしょう。

なお、中治り現象は、生命を維持しようとする脳の働きによるものだと考えられていますが、明確な原因は分かっていないとされています。

 

ケース②:老衰以外の原因を発見・治療した場合

老衰以外の原因を発見・治療した場合には、心身の機能が低下している状態からでも復活する可能性があります。
とくに、寝てばかりいる場合には、老衰のほかに以下のような原因が潜んでいるケースも少なくありません。

  • 認知症
  • 脱水症状
  • 薬の副作用
  • 慢性硬膜下血種
  • 内臓疾患
  • 感染症

老衰の前兆とされる初期症状のほかに気になる点があれば、早めに医療機関に相談しましょう。
老衰以外の原因を発見して治療すれば、症状の改善が期待できます。

 

老衰死への備えとして準備したい3つのこと

老衰死への備えとして準備しておきたいことは、以下の3つです。

  1. 葬儀について話し合う
  2. 延命治療の意思を確認する
  3. 遺言書を準備する

老衰死の兆候が出たら、残された時間を使ってできる限り終活を進めましょう。

 

備え①:葬儀について話し合う

葬儀は、本人だけでなく見送る家族にとっても大切なセレモニーです。
老衰の兆候が出てからでも遅くないので、葬儀に関して話し合っておくと、残された家族が混乱せずに済みます。

本人に「どのような葬儀にしたいか」「誰に参列してもらいたいか」などの希望があれば、事前に伝えてもらい、意向を葬儀に反映しましょう。
最近はさまざまな葬儀プランがあり、柔軟な対応をしている葬儀社も少なくありません。
超高齢化社会の中、多くの葬儀社が生前から葬儀の相談を受け付けています。

葬儀に関する希望がある場合は、ぜひ無料事前相談の利用も検討してみてください。

 

備え②:延命治療の意思を確認する

老衰が進み、医療の手を借りなければ生命を維持できなくなったときにどのような治療を受けたいか、本人と家族で相談しておくことも大切です。

終末期の延命治療に対する考え方は、1人ひとりで異なります。
実際に、一度延命治療を始めると数年間にわたって生命を維持できるケースもあり、寿命が延びたと喜ぶ家族がいます。
一方、老衰により意思疎通ができない状態のまま治療を続けることに、心情面・費用面で悩みを抱える人も少なくありません。

延命治療の選択は、本人がどのような最期を希望しているかがとても重要です。
しかし、本人に延命治療の意思を聞くのは気が引けると感じる方もいるでしょう。

延命治療の意思を確認したいときには、「事前指示書」がおすすめです。
事前指示書とは、本人が意思表示ができなくなった場合に、どのような延命治療をするかを事前に明らかにしておく書類で、「リビングウィル」とも呼ばれています。

事前指示書(リビングウィル)とは

事前指示書には、主に以下のような項目を記載します。

  • どこで最期を迎えたいか(自宅や病院など)
  • 心肺蘇生をするか
  • 人工呼吸器を使用するか
  • 自力で食事ができなくなったら胃ろうをするか

ほかに本人の希望があれば記載しておきましょう。
事前指示書を用意しておけば、いざという状況でも、「本人の希望だから」と家族がスムーズに判断できます。

高齢になり老衰の兆候が出たからといって、すぐに人生が終わるわけではありません。
元気があるうちに、希望する内容が変わる可能性も十分考えられます。
事前指示書は、必要に応じて時折話し合いながら、変化があれば都度書き直しましょう。

 

備え③:遺言書を準備する

遺産相続や生命保険金の受け取りに関して明らかにしておきたい場合は、遺言書を準備しておくとトラブルを回避しやすくなります。

遺言書がなくても、法律に沿った遺産相続が可能です。
しかし、遺言書があれば、残された家族がよりスムーズに手続きを進められます。

なお、遺産相続には借金も含まれます。
借金がある場合は、元気なうちに家族と相談し、今後の対応を決めておきましょう。

遺言書の書き方を詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】【文例あり】遺言書の書き方とは?5つのポイントと要点をわかりやすく解説

 

老衰死への備えに関して相談したい方は

老衰死の備えといっても、「具体的に何から始めるべきか分からない」と悩んでいる方も少なくないでしょう。
葬儀や延命治療に関する希望が1人ひとり異なるように、終活に正解・不正解はありません。

老衰死を含め、万が一の備えをしておきたい方には、エンディングノートの作成がおすすめです。
エンディングノートとは、人生の終わりに備えて自分の想いや意思を記載しておくもので、終活ノートとも呼ばれます。

斎奉閣では、老衰死への備えを含めたさまざまな無料事前相談を受け付けているほか、エンディングノートを無料でプレゼントしています。
老衰死の備えに関する悩みがある方はもちろん、終活の相談をしたい方は、ぜひ斎奉閣へお問い合わせください。

 

まとめ:老衰について

病気や事故と違い、老衰死は今日明日に突然やってくるものではありません。
老衰死の前兆が現れてからでも、終活を進める時間は十分あります。

葬儀や延命治療など、家族が悩みがちな項目はできるだけ早めに話し合っておくのがおすすめです。

なお、斎奉閣では無料事前相談を実施しておりますので、老衰死の備えに関するお悩みがある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

無料事前相談受付中

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「事前準備を始めたいけど何から始めればわからない…」という方はお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

花岡一雅(はなおか かずまさ)四日市地区斎奉閣 館長 2級葬祭ディレクター

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