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湯灌(ゆかん)の儀とは?流れやマナー、料金相場を解説

公開:2021.12.02

湯灌(ゆかん)の儀とは?流れやマナー、料金相場を解説

「湯灌といわれても、どんなものなのか分からない」 故人を安らかな姿で送るためのサービスにはさまざまなものがあり、いざ葬儀が必要な場面になってから判断するのは難しいものです。

この記事では、湯灌の内容を理解し適切に選択できるよう、他の処置との違いや湯灌の儀の手順などを紹介します。

▼気軽にご相談ください。

湯灌とエンバーミング、清拭の違い

湯灌(ゆかん)とは、故人の身体を洗い清めることです。

湯灌専用の浴槽やシャワーを使用し、私たちが入浴するのと同様、故人の髪や身体を洗浄します。

湯灌を行う目的はさまざまありますが、ご遺体を清潔にするという衛生的な観点のほか、旅立ちの前に身体を清めて成仏を願う儀式的意味合いが強いといえるでしょう。

そして何より、お疲れ様という遺族の気持ちを故人へ伝えるために、湯灌が選ばれる面があります。

湯灌の儀の進行を担うのは、納棺師や湯灌師といった専門スタッフです。

スタッフにすべて任せることも可能ですが、儀式やねぎらいの意味合いからも遺族が立ち合い、一部分を手伝うことで故人を送り出す場となります。

葬儀の前に、故人に対して行われる処置には他にも、エンバーミングや清拭などがあります。 

ここからは、湯灌とエンバーミング、清拭との違いを見ていきましょう。

  

エンバーミング

エンバーミングは、ご遺体の長期保存を目的とした、腐敗を防止するために施す処置のことをいいます。

湯灌と異なるのは、故人が旅立つ準備として身体を清める、儀礼的意味合いはないという点です。

また、入浴のように身体を洗う湯灌に対して、エンバーミングでは血液と防腐液の交換によって防腐処置を施します。

そのため、湯灌は自宅で行われる場合もありますが、エンバーミングはエンバーマーと呼ばれる有資格者が専門の施設で行うことが特徴です。

 

清拭

アルコール綿やお湯で温めたタオルなどを用い、ご遺体を拭いて清めるのが清拭です。

エンゼルケアとも呼ばれ、病院で亡くなった場合は看護師が清拭を行います。 浴槽やシャワーを使って身体を洗うものではありませんが、葬儀社によっては清拭を含んだ処置を古式湯灌としていることもあります。

また、エンゼルケアの範疇として、衣服の着せ替えや化粧を施してくれる病院もあるようです。

病院や葬儀社がどこまでを清拭としてサービスに含んでいるのか、きちんと確認することが大切だといえるでしょう。  

 

湯灌やエンバーミングを行うメリット・デメリット

ここでは以下の2つについて、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。

  • 湯灌
  • エンバーミング

違いをよく理解したい方は、ぜひ参考にしてください。

 

湯灌のメリット・デメリット

メリット

デメリット

・亡くなった方の体をきれいにして送り出せる
最後の触れ合いが心の慰めになる
・ご遺体のにおいを除去できる

・葬儀にかかる費用が増える
湯灌に対応していない葬儀社もある

湯灌は亡くなった方はもちろん、送り出す側にもメリットがあります。

湯灌は成仏や幸せな来世を願う儀式であり、遺族の心を満たす意味もあるのです。

また、「真夏に亡くなった」「火葬場の予約がなかなか取れない」といった場合も、湯灌によって衛生的な状態を保ちやすくなります。

一方、湯灌は専門のスタッフなどが対応する分、追加費用がかかります。

対応していない葬儀社もあるため、湯灌を必ず行いたい場合はあらかじめ実施の有無について確認するとよいでしょう。

 

エンバーミングのメリット・デメリット

メリット

デメリット

・最後の時間をゆっくり過ごせる
・安心して触れ合える
・(海外で亡くなった場合)ドライアイスの代わりになる

・湯灌よりもさらに高額な費用がかかる
血液と防腐剤の入れ替え時、切開が必要になる
・数日から長くて1週間ほど遺族の元から離れる可能性がある

防腐処置であるエンバーミングはご遺体の長期保存が可能となるうえ、感染防止の効果も期待できます。

そのため、故人との時間をゆったり取ったうえで、葬儀の準備を進めていきたい方におすすめです。

また、ご遺体を海外から日本へ搬送する場合、使用が禁止されているドライアイスの代わりに保全の役割を担ってくれます。

一方、より専門的な器具やスキルが必要な手法である分、費用が高額になりがちな点はデメリットです。

処置の際は1cm程度の切開が必要ですが、ご遺体に傷をつけることに抵抗がある方も少なくありません。

エンバーミングの有無は、メリットとデメリットを比較したうえで慎重に検討しましょう。

 

湯灌の手順

次に、湯灌がどのような手順で行われるのかを解説します。

湯灌は葬儀場のほか、専用の浴槽を置くスペースが確保できれば自宅で行うことも可能です。 

 

1.準備

浴槽の搬入(自宅で行う場合)や、ご遺体への死後硬直緩和のマッサージ、ご遺体の浴槽への移動など専門スタッフが準備を行います。 故人にはバスタオルをかけ、肌が見えないように配慮されます。  

 

2.お清め

スタッフから湯灌の儀について説明を受けたのち、参加している遺族や親族が交代で故人にお湯をかけて清めます。

お清めに使用されるのは、冷たい水に熱いお湯を足して適温にした逆さ水です。

また、故人にお湯をかけるときは、左手に持った柄杓で足元から胸に向かってかけます。
これらは逆さごとといわれ、非日常である死と私たちの日常とを区別するための風習です。  

 

3.全身の洗浄と洗髪

お清めのあとは、故人の全身をスタッフがシャワーで洗い、髪はシャンプーをします。

全身と髪の洗浄が終わったら、身体はタオルで拭き、髪にはドライヤーをかけます。 お清めや全身を洗う際も、故人にはバスタオルをかけたまま行われるため、身体を見られてしまうのではないかといった心配はありません。  

 

4.着せ替えと化粧

次に、故人の身なりを整えます。
着せ替えでは、遺族が準備した衣服を着せることができます。

普段着やスーツ、ドレス、着物など、故人が生前に着用していたものを着せたいときはスタッフに相談してみるとよいでしょう。

また、仏教の考えにのっとり旅支度として仏衣を着せることもあります。
浄土真宗を除いた仏教の宗派においては、亡くなった人が49日間の旅をすると考えられ、その支度をするのが旅支度です。
仏衣は通常、葬儀社や納棺師が用意し、足袋や脚絆、手甲、編み笠、草履、杖などといった旅姿に必要なものとセットになっています。

衣服とともに重要なのが化粧です。
顔色を整えるため、男性であっても薄化粧をする場合があります。
故人が愛用していた化粧品を使うこともできるほか、生前の写真を用意しておくとスタッフが参考にしてくれるので、希望があれば伝えましょう。
髪もこのときに整えられます。  

 

5.納棺

湯灌が終わり、故人の身なりが整ったら、ご遺体を棺に納めます。
スタッフの誘導に従い、遺族が力を合わせて納棺します。 納棺のあと、思い出の品物を棺に納めることが可能です。

ただし、火葬する関係で棺に入れられないものがあるので、事前にスタッフに確認しておきましょう。  

上記の流れは一例ですが、全体の所要時間は1〜1時間半ほどです。
特に自宅で湯灌をするときには、スペースの関係で準備や納棺に時間がかかる場合があります。 十分に時間を確保しておくとよいでしょう。

  

湯灌の儀 立ち会い時のマナー

湯灌の儀に立ち会う際の、マナーについて確認していきます。

まず、湯灌の儀に参加するときの服装については、特に決まりはありません。

湯灌を行うタイミングによって、服装を決めてよいでしょう。 たとえば、葬儀よりも前の日程で湯灌を行うのであれば、平服で参加して構いません。

また、葬儀会場で通夜式の直前に湯灌をするなら、喪服で参加し、そのまま通夜式に参列することができます。

そして、幼い子どもが参加する場合は、きちんと大人がそばにいるように気をつけましょう。
普段とは違う雰囲気に、子どもが動揺してしまうかもしれません。

湯灌の儀が進行中にその場を離れたり、再度参加したりすることはマナー違反とはなりませんので、無理をさせないようにするのが大切です。

また、湯灌の儀に参加するのは、基本的に故人と近しい遺族や親族とされています。
その他の関係の人の参加を断ることは、マナー違反ではありません。

湯灌を儀式と捉えると厳しいマナーがあるようなイメージを受けますが、故人の旅立ちをお手伝いする温かい場となるような意識が大切だといえるでしょう。  

 

湯灌の料金相場

湯灌の料金設定は葬儀社によって異なりますが、多くは葬儀の基本プランに含まれておらず、オプションとして料金がかかります。

あくまで目安ですが、湯灌にかかる料金は5〜10万円程度と考えておいてよいでしょう。
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湯灌のほかにも、ご遺体処置に関するサービスはさまざまあり、葬儀社によって価格も内容も異なります。
まずは、どんな状態で故人を送り出したいのかしっかりと考え、納得のいく選択をしましょう。

何が必要なのか分からない場合は、葬儀社のスタッフに相談することで、ご遺体の状態や葬儀までの日程を考えて提案してくれます。 

 

まとめ

今回は、湯灌の内容やエンバーミング・清拭との違い、手順とマナー、料金相場について解説しました。

湯灌は故人とのお別れに際して、遺族がしっかりと手をかけてあげられる最後の瞬間ともいえます。

「生前お風呂が好きだった」「最後にゆっくりお風呂に入って生前の疲れを癒してほしい」 そんな思いがあれば、湯灌を選ぶことは悔いのないお別れの一助となるでしょう。

湯灌に関するご相談は、ぜひ斎奉閣にお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

笹浦久朋(ささうら ひさとも) 桑名地区斎奉閣 館長 1級葬祭ディレクター